「大切なことはすべて腸内細菌から学んできた」
この90頁にも満たない薄っぺらい本を見つけたのは、旅先で寄った京都の本屋でした。
京都駅からバスで1時間。お店の前まで行ったものの閉まっていたことが2回。3度目の来訪でようやく中に入れた嬉しさからよく覚えています。
帯に書かれたこの一文が気になり購入しました。
「この小さな本は、生涯の多くの時間を腸内細菌に関する研究に費やしてきた一人の研究者の考え方、生き方が詰まった一冊です。」
細菌研究者が書いた哲学書です
著者の光岡知足さんは、菌の研究の草分け的な存在で、菌の働きが日本でほぼなにも知られていない、今から約60年前からコツコツと腸内細菌の研究を重ねてこられた方。
みなさんもおそらく聞いたことがあると思うのですが、「善玉菌」と「悪玉菌」いう言葉も、光岡さんがネーミングされました。
長年の研究を通じて、「私たちが生きているということはいったいどういう現象なのか」と疑問をもち、腸内から結論を見出したことがとても興味深いです。
少し長いですが、引用させていただきます。
私は腸内細菌の研究をすることで、腸という小さな宇宙と現実社会という大きな宇宙のつながりを感じるようになりました。
顕微鏡のなかの生態系は、人間社会の営みとも重なり合います。すべてはつながり、決して無縁ではないのです。
菌たちの生態系である腸内フローラのありようは、一個の小宇宙であると同時に、人間社会の縮図のように映ります。
腸内には、百兆もの菌がいて、その働きは「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類されるそうです。
「善玉菌」とは、発酵を起こす菌。
「悪玉菌」とは、腐敗を起こす菌。
「日和見菌」とは、そのどちらにも当てはまらない多数派の菌。
それらが、2対1対7の割合で共生している時、宿主の腸は健康を保つことができると著者は述べてます。
この本でも少し触れられていますが、「働きアリの法則」というのがあって、
”働きアリのうち、よく働くのが2割、普通に働くアリが6割、ずっとサボっているアリが2割。
2割のよく働くアリが全体の8割の食料を集めている”のだそうです。
(Wikipedia参照しました)
人間関係でもいわれるのが、2割の人があなたと相性がよくて、7割の人が普通で、1割の人はあなたのことが嫌い。
腸内はまさに、社会の縮図です。
(本文と関係のない写真です)
2割の善玉菌がいれば調和は保たれる
悪い菌が生息していても特に問題はなく、2割の善玉菌の存在がとても大切なのだそうです。
2割の善玉菌がいれば調和は保てる。
そして、私が特に好きな部分がこちら。
社会は善玉菌ばかりで成り立っているわけではないのです。落ちこぼれていてもいいではないですか。少しくらいはみ出しもがいても、それを許容する温かさが必要でしょう。
不完全であっても存在することが許され、善いところと悪いところ、それらの総和で私たちは成り立っています。生き物は、そうしたすべてを包み込んだ懐の広い世界に棲んでいると思うのです。
人間社会の営みもそうあって欲しいものだなあと思うし、自分もそういう考え方でいたいとも。
良いこともある、悪いこともある、それでオッケーだ。
腸内を整えるコツ
ここで真面目な腸内のお話。
腸内環境を整えるのに、以下のことに気をつけたら良いそうです◎
- 動物性タンパク質は摂りすぎない
- 発酵食品をとる
- 体調が悪い時は間食を避け、野菜と果物をたくさん摂る
- ストレスを溜め込まない
「現実を変えるのが大変な時は、体のなかに自分の味方を増やすこと、まずそこから始めてはどうでしょうか?」
(本文と関係のない写真です)
最後に。
この本のサブタイトルが「人生を発酵させる生き方の哲学」なのですが、
「人生を発酵させる生き方」ってのはどういうことなのだろうと、私なりに少し考えてみました。
「発酵」も「腐敗」も菌による働きですが、似て非なるものです。
バランスが崩れると私たちは腐敗へと傾いてしまう。
生きてる間は、願わくば発酵をしていたい。
それはつまり、自分自身の運命を受け入れ、調和しながら
「いい感じに生きる」ことかなと。
いい感じというのが、バランスです。
そんなことをふと考えていた午後でした。
あなたは今日もいい感じに生きていますか?