連載「ここで、これから」vol.02 宮下成美さん&吉井貴子さん「出来ることから。種をまくように」(前編)

<インタビュー・文/峰尾亮平(瀬戸内いとなみ舎)>
 
島で暮らすひとたちの、
ここにいる理由と、これから。
 
インタビュー形式でそれを記していく連載、
『ここで、これから』。
 
島で福祉事業を営む宮下成美さんと、
同じく島で『Edwards Roastery Cafe』を運営する吉井貴子さん。
  
おふたりが中心となり、2月2日にイベントが開かれます。
「大西つねき講演会 in 江田島」
テーマは『お金の仕組みを知ってワクワクする未来を作ろう』
 
なんだか気になりますね。
 
そこで、前半、まずはイベントの話の前に、
おふたりの「いまとこれから」を聞きました。
 

宮下成美さんと吉井貴子さん

 
江田島出身の宮下成美さんと、広島市出身の吉井貴子さん。
吉井さんはご主人(ブレンダンさん)と一緒に2015年7月に江田島へ移住。
 
よろしければぜひ「江田島人物図鑑」の記事もご覧ください。
 
江田島人物図鑑|宮下成美さん(2017年11月)
江田島人物図鑑|吉井貴子さん(2016年7月)
 

宮下成美さん

 

 
-宮下さんは島で福祉事業を営んでらっしゃいますね。
 
宮下さん:はい。障がいがあるこどもたちを対象とした放課後等デイサービス(「おひさま」)を運営しています。 小学生から高校生まで、1日にだいたい10人程度を受け入れています。
 
-今年で何年目になりますか?
 
宮下さん:2012年からなので、今年で8年目になりますね。
 
-8年目。すごいですね。

放課後等デイサービスおひさま

江田島市大柿町柿浦1954-1
 
・Facebook
https://www.facebook.com/%E6%94%BE%E8%AA%B2%E5%BE%8C%E7%AD%89%E3%83%87%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%81%8A%E3%81%B2%E3%81%95%E3%81%BE-516381318758600/
・HP
https://ohisama2012.jimdofree.com/

 
宮下さん:この4月から新たにもうひとつ事業を始めます。同じ大柿町にて、障がいがある方向けのグループホームを開設します。
 
-グループホームと言うと・・・
 
宮下さん:18歳以上の知的障がいや精神障がいのある人の共同生活の場、ですね。
 
-なるほど。
 
宮下さん:放課後等デイサービスの「おひさま」をやってきて、次の受け皿を作りたいと思っていました。実際に、「おひさま」を利用していた子で高校を卒業する子も出てきて。
 
-次の受け皿。なるほど。
 

吉井貴子さん

 

 
吉井さん:わたしは平日に広島の児童クラブで働きながら、週末に江田島で『Edwards Roastery Cafe(エドワーズ ロースタリー カフェ)』をやっています。
 
-お店のオープンが2019年の4月でしたよね。今はどうですか?
 
吉井さん:相変わらずブレンダンが家のあちこちを作り続けています 笑。一応カフェ部分はそれなりに出来上がっているのですが、それ以外の部分も引き続きDIYで改装しています。
 
-ほんとうになんでも手づくりしますよね。

Edwards Roastery Cafe

古民家をセルフリノベーションしたカフェ。
ピザ、サンドイッチ、パスタなど、日替わりのランチメニューはFacebookなどでご確認ください。
 
営業:土曜・日曜 11:30-15:00
江田島市大柿町深江4267
 
・Facebook
https://www.facebook.com/Edosfirefoods/
・インスタグラム
https://www.instagram.com/edwards_roastery_cafe/

 
吉井さん:そうですね。ありがたいことにテレビや雑誌でも少し取り上げていただいたりして、ブレンダンの人柄というかキャラもだいぶ浸透してきて、お店も少しずつですが軌道に乗ってきました。
 
-いいですね。
 
吉井さん:民泊の営業許可も取れているので、少しずつそれも始めたいと考えています。
 
-民泊も。いいですね。
 


 

島で感じる社会の流れ

 
宮下さん:ぼくが携わっている障がい者福祉事業というのは、ある意味で一番世相というか経済状況が反映されやすいジャンルなのかなと思います。給付費も減ってきていますし、障がい者福祉事業から見た世の中というのは、正直なかなか豊かな社会とはいえない状況なのかなと感じています。
 
-なるほど。近年では、人間を「役に立つ/立たない」で線引きしたり、心が痛くなるような事件もありましたよね。
 
宮下さん:そうですね。全体的に余裕がなくなってきていることをすごく感じます。
 
-そうしたなかで新しい事業。
 

建築中のグループホーム「サンライズ大君」
 
宮下さん:福祉業界って、大きくお金を稼いだり増やしたりできる世界じゃないんですよね。でも、グループホームがあることで幸せになる入居者がいたり、ゆとりが生まれる家族がいるかもしれない。人のためになることが出来たらいいなという想いでやっています。一方で、自分は経営者でもあるので、お金について考える機会も増えてきました。
 
-お金のこと。
 
宮下さん:グループホームをやるにあたって銀行に相談に行くのもそうですし、働いてくれているスタッフのことも考えたりします。グループホームに入る障がいのある方たちは、作業所などで働いて給料をもらう方が多いです。それとは別に、20歳以上になると障害基礎年金をもらうことが出来ます。もちろん、素晴らしい制度です。お給料だけでは自立して生活を営むには充分では無いですし。一方で、この業界のヘルパーさんの平均的な給与を見ると、なんだか色々と考えてしまうのも本音です。もちろん、それぞれのお金を簡単に比較するものでもないですし、何が適正かというのは難しいところなのですが。
 
-なかなかきつい現実ですね。
 
宮下さん:特にこの事業をしていると、この業界全体でお金がないんだなということを感じます。一方で、世の中にはお金がたくさん回っているところもある。お金って一体なんだろうな、と思うときが増えてきました。
 

 
-なるほど。あの、ぼくは最近よく「生存権」について考えるんですね。憲法に明記されている権利、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」というものなんですが。
 
宮下さん:そうですね。自分の肌感覚では、社会がどんどん「勝ち/負け」で分断されていっているような気がします。生活とか経済レベルの二極化が激しくなっているというか。勝つひとたちはどんどん豊かになっていくんだけど、不幸にも勝てなかったひとや、運が悪かったひとには、とても生きづらくなっているように思うときがあります。
 
-吉井さんはどうですか?
 
吉井さん:わたしも児童クラブでこどもたちを見ていて、「この子たちの将来のために、わたしは何が出来るだろう」ということをよく考えるようになりました。
 
-何を残せるか。
 
吉井さん:そうですね。この子たちが大人になったときに、どんな環境や、どんな社会、どんな仕組みを残して、引き継いでいけるだろう、と考えるようになりました。そう思うと、このままじゃいけないんじゃないか、と思うことが増えてきました。
 

出来ることからやってみよう

 

吉井さん:お店が出来てから、ブレンダンやナルくんたちとこうして集まって話すことが増えてきました。その流れで、自然と、少しずつでもいいから、社会や地域のためになることをやってみたいと思うようになりました。そのひとつとして、今回、大西つねきさんの講演会を企画しています。
 
宮下さん:江田島で生まれるこどもの数は、1年で100人を切りました。一方で、人口は1年で500人ずつ減り続けています。将来を思うと、やっぱり、「大丈夫かな」と思う気持ちが強くなりますよね。この子たちが大人になるときに、どんなことを残していけるか。こどもの教育環境を豊かにしていくことももちろんそうですが、おとなである自分たちの意識も変わっていかなくてはいけないなと感じています。
 
-そのために、おとなが出来ること。
 
宮下さん:そうですね。今回、講演会を企画するご縁もあり、グループを作りました。「Seed for Future ~種をまくひとたち」と名づけました。
 
-いいですね。


 

「祭りのあと」を生きるには

 
宮下さん:少し話が飛んじゃうかもしれないのですが、最近、「祭りのあと」というのをよく考えるんです。
 
-祭りのあと・・
 
宮下さん:大きなお祭りや、フェスとか、小さくてもイベントをやると、すごく盛り上がって、そのときは気分も高揚するのですが、でも、冷静になってみれば現実は何も変わっていなくて、祭りの前と同じ日常があるんですよね。
 
-日常。そうですよね。
 
宮下さん:町おこしとかもそうだと思うんですが、一時的な盛り上がりだけではなくて、もっと、日常の部分から変わっていく必要があるなと思うんですね。そのためには、ぼくらが毎日を生きる意識みたいのが変わっていくといいんだろうなあと。
 
-うん、うん。
 
宮下さん:せっかく何かイベントみたいなことをやるなら、そういう、毎日の視点が変わるきっかけとなるようなことがやってみたいと思いました。新しい知恵を手に入れたり出来るような。それも、先生と生徒というような、教える/教わるというだけの関係ではなくて、一緒になってチャレンジしたり、みんなで学べるような場を作りたいなと思っています。
 
-そういう意味では、「お店」っていうのはおもしろい空間ですよね。祭りの場にもなるし、祭りのあとの場にもなり得る。非日常にも日常にもなる。
 
宮下さん:たしかに。そういえばブレンダンは、いつでも先生ぶることがなくて、なにごとも「一緒にやろう」ってかんじなんですよね。それでいつも巻き込まれます。巻き込み力が強いというか 笑
 
吉井さん:ナルくんの「巻き込まれ力」も相当強いというか 笑

宮下さん: 笑


ブレンダンさん
 
吉井さん:お店では、そういう「一緒につくる」ということをどんどんやってみたいですね。自給が体験できる場所、手づくりが体験できる場所、自分たちで作れる場所。「あ、これって自分でも作れるんだ。家でもやってみよう」とか、そう思うきっかけになるような場所を目指したいですね。
 
-いいですね。
 
吉井さん:こどもにもたくさん来てほしいですね。こどもたちに、どんな世界を引き継いでいけるだろう。そのために、少しずつでも出来ることをしたいですね。
 

後編では・・・

 
後編では、おふたりが中心となって企画している講演会、『大西つねき講演会 ~お金の仕組みを知ってワクワクする未来を作ろう』のことを聞いていきます。


『大西つねき講演会 in 江田島』
 
開催日 2月2日(日)
開 場 12:30
講 演 13:00-16:30
   ※16:40-サイン会あり
 
会 場 能美市民センター
   (中町港徒歩1分/能美町中町4859-9)
 
参加費
(一般)前売り2,000円/当日2,500円
(学生)1,000円
(障害をお持ちの方および介助者)1,000円
 
◆前売り申込みサイト
https://www.kokuchpro.com/event/seedforfuture/
◆イベントFacebookページ
https://www.facebook.com/events/443233029900368/

 

連載『ここで、これから』

 

新連載「ここで、これから」vol.01 しまのぱん souda! 西村京子さん「島で石窯パン屋カフェを開きたい」(前編)


 

新連載「ここで、これから」vol.01 しまのぱん souda! 西村京子さん「島で石窯パン屋カフェを開きたい」(後編)


 

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